横浜「女神橋」が低くて船はどうする?橋の高さの基準や橋にまつわる船舶事故事例を紹介

海・船

船乗りをしている、はっしーと申します。

仕事柄、度々橋の下をくぐる事が多いのですが、横浜で橋を巡るトラブルが発生したと聞き、船乗りの立場から調査、検証してみることにしました。



横浜、みなとみらい21「女神橋」を巡るトラブルの概要

横浜、みなとみらい21に、歩行者デッキ「女神橋」が架けられ、運河を走る遊覧船が、橋の高さが足りずに通行できないかもしれないという状況が起こっているそうです。
要点をまとめてみました

  • 橋の高さは3.6Mの計画でつくられ架けられた
  • 3月18日に橋が架かりその日に横浜港周遊クルーズ船から橋がくぐれないと、市に連絡
  • 100m奥に架かる「国際橋」の高さも公称3.5mで、この橋を基準に計画された。
  • 「国際橋」の実際の高さは4,2mあり、横浜市は実測での計測は行っていなかった
  • 横浜市は、高さ3・5メートルよりも大きな観光船が通航していることは把握していなかった

というのが主な流れです。

詳しい場所はこちらです。

みなとみらい21運河を走るクルーズ船はどんな船?

高さ3.5mの橋を通れない船という事で、どの様な船か気になったので調査してみました。

みなとみらい21運河を航行するクルー船の会社をネットで見つけました。

  • 京浜フェリーボート株式会社

横浜港内の水上バスを運航している会社のようです。

船はこちらのの様です。

確かに3.5mはギリギリの感じですね。

HPに航路まで載せているのに「高さ3・5メートルよりも大きな観光船が通航していることは把握していなかった」とは・・・。

この他にも、屋形船などもこの運河を通る事もあるようで、一般のクルーザーも通ることがあるようです。

色々な船に影響が及びそうですね。

世間の反応は?

Twitterなどから世間の反応を見たいと思います。

 

橋の高さの決め方は?

もちろん、橋の高さを決める時は、その水域を走る船をリサーチするはずです。

横浜の事はわかりませんが、長崎では保安庁や船舶代理店、水先案内人や船会社などの代表が集まる会議があり、意見を求められると聞いています。

その様な横の繋がりがあるかわかりませんが、横浜市の水上バスなら真っ先に調べないといけないところですよね。

余談ですが、大型クルーズ船などが通る所の橋の高さは、65mでつくられています。

明石大橋、瀬戸大橋、長崎の女神大橋などは高さ65mです。

大型クルーズ船、クイーン・メリー2号が高さ62mですので、大型クルーズ船もこれくらいの大きさで造られていると考えられます。

おそらく現在一番大きな22万トン型クルーズ客船、オアシス・オブ・ザ・シーズは、高さ65mの女神大橋をくぐれないと聞いたので、もっと高いのでしょう。
(ネットでは高さの表記がありませんでした)

橋の高さの表記の決まりは?

船が航行する際には、海図で橋の高さを確認します。

海図での橋の高さは、最高水面からの高さとなっています。
最高水面って??

ざっくり言えば、満潮の一番高い位置の水面からの橋の高さを書いています。

実際の感覚では、若干低めに書かれている事が多いようです。

ちなみに、海図では、横浜みなとみらい21の「国際橋」は3.2mと表記されています。

横浜「女神橋」はどうする?

これから女神橋はどうなるのでしょうか?色々考えて見ました。

干潮時に航行

干潮時に橋をくぐるという方法がありますが、横浜はもともと潮位差があまりなく、この1ヶ月での最大の潮位差は176㎝しかありません。

しかし、この水上バスの但し書きに、満潮時は欠航する事があると書いてありましたので、元々そんなにクリアランスが無かったのでしょう。
となれば、干潮時でも結構厳しいかもしれません。

船を低くする

①天井を低くする

船を改造して低くする方法があります。
この水上バスは、屋上に人が乗れる造りになっているのでそこをなくして天井を低く作れば通れるかもしれません。

しかし、クルーズ会社もそんな事はしたくないでしょう。

②船を沈めて低くする

船に重りを載せて、船を沈めて低くする方法があります。

しかし、船には満載喫水線というものがあり、その線を超えて沈めて航行すると法律違反になります。

船の航行的にも危険が伴うので満載喫水に余裕があれば良いのですが、ほとんどないはずなので、無理でしょう。

橋を高くする

一番の安全策はこれでしょう。

低い橋は、これまで通れていた船は油断して通りそうなので、事故を起こす可能性があります。

一番お金がかかりますが、これが一番安全な方法だと思います。

橋にまつわる船舶事故事例を紹介

近年、橋と船舶の事故が相次いでいます。
いくつか紹介したいと思います。

関空連絡橋衝突事故

2018年9月の台風21号による関西地方の被害は記憶に新しいと思いますが、関空連絡橋にタンカーが衝突した事故は衝撃を受けました。

私も大阪湾で荒天避難している時に関空の付近は風が当たりにくいのでは?と考えた事がありましたが、リスクを考えて関空付近での避難を断念した事がありました。

ですので、大阪湾での荒天避難で地形的に避難したくなる気持ちは痛いほどわかります。

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周防大橋衝突事故

2018年10月、山口県の周防大橋に貨物船が衝突。

光ファイバー線と水道管を破損しそのまま広島へ航行していったという事故。

当て逃げもさる事ながら、事前に橋の高さをよく確認していなかった事が原因です。

先日、周防大橋の架かる大畠瀬戸を航行しましたが、その時のものと思われる傷がまだ橋に残っていました。

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事故には至っていませんが・・・

2020年2月末、鹿児島県の黒之瀬戸に外国船が侵入しようとして、保安庁に注意を受け進路を変更するという事例が起こっています。

海上保安庁からの通達で知ったのですが、5000tの貨物船が、八代海に入るのに近回りしようと黒之瀬戸に進路を向けていました。

黒之瀬戸には、高さ23mの橋があり、貨物船は高さが27mであったとの事で、もし通っていれば周防大橋の二の舞になっていたところです。

私も黒之瀬戸を通った事がありますが、5000tの船が通るには狭いと感じます。

横浜「女神橋」が低くて船はどうする?まとめ

今回は、クルーズ船の船員が橋の高さを良くチェックしていた事で事故は免れたようですが、横浜市の対応にはチョット疑問が残ります。

橋は高さに余裕を持ってという橋架けの常識が無かったのでしょう。

今後「女神橋」がどうなるか注目です。



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