選挙投票義務化はどこの国が実施している?罰則は?メリット・デメリットや世間の反応を紹介

日常

投票率の低下が問題視されて久しく、7月5日に投開票された東京都知事選挙ではSNSなどを活用した選挙戦が繰り広げられたものの投票率は55%にとどまり、前回よりも4.73%下回る結果となりました。

ダウンタウンの松本人志さんは「ワイドナショー」で都知事選の投票に行かなかったことを告白し、「『なし』を設けてくれたら行く」と述べたことで「影響力のある芸能人が選挙離れを促す発言をしている」など多くの批判の声が寄せられました。

自民党の石破茂元幹事長は27日に開かれた講演会で「民主主義が機能する条件は、可能な限り多数が参加することだ。投票は義務にすべきだ」と語り、「(票を)入れたい政党、候補者がいないなら白票を入れてほしい。
民主主義はそれほど厳しいものだ」と述べたことで、投票義務化について注目が集まっています。

そこで今回は選挙投票義務化について調べてみました。



選挙投票義務化はどこの国が実施している?罰則は?

世界には義務投票制を採用している国が約30ヵ国ほどあります。

選挙投票義務化を実施している国

罰則が厳格に課される国もあれば罰則のない国もあるため、義務投票制が投票率向上につながっているかどうかは国によってばらつきがあります。

罰則規定の厳格さで分けてみました

罰則適用の厳格な国

罰則規定が厳格な国です。

  • ウルグアイ
  • キプロス
  • オーストラリア
  • シンガポール
  • スイス(シャフハウゼン州のみ)
  • タイ
  • 北朝鮮
  • ナウル
  • フィジー
  • ベルギー
  • ルクセンブルグ

罰則適用が厳格でない・不明な国

罰則規定が厳格でない国や不明な国を紹介します。

  • アルゼンチン
  • エクアドル
  • エジプト
  • ギリシャ
  • ガボン
  • トルコ
  • パナマ
  • パラグアイ
  • ブラジル
  • ペルー
  • ボリビア
  • モンゴル
  • リヒテンシュタイン

罰則が定められていない国

選挙投票義務化を実施しているものの、罰則がない国です。

  • イタリア
  • グアテマラ
  • コスタリカ
  • ドミニカ共和国
  • フィリピン
  • ホンジュラス
  • メキシコ

上記の国の多くが罰則の内容を罰金としていますが、キプロスや北朝鮮、フィジーでは入獄も含まれ、タイでは次回の同種選挙の被選挙権が剥奪されます。

選挙投票義務化の実施例

先進国でありながらも厳格な投票義務制度を取り入れて高い投票率を持つベルギーとオーストラリアを見てみましょう。

ベルギー

ベルギーでも罰金制度が取り入れられいます。

  • 初回:5~10ユーロ(約600円~約1,200円)
  • 二回目以降:10~25ユーロ(約1,200円~約3,000円)

が科されます。

  • 15年間に4回以上投票義務を怠る→選挙権制限がかかる。
  • 10年間選挙資格停止→公職にも就けなくなる。
  • 公務員の場合→昇進も差し止め。

このように厳格な投票義務制度であるため、ベルギーの投票率は約90%を保っています。

オーストラリア

オーストラリアの罰金は

  • 原則として20オーストラリアドル(約1,500円)
  • 裁判所で争った場合、50オーストラリアドル以下(約3,770円)+裁判費用

となります。

オーストラリアでは投票しやすい環境が整備されていることも投票率が高い要因のひとつとされています。

期日前投票所は600か所以上に設置され、病院や老人ホーム、刑務所などの施設でも投票が可能です。郵便投票や視覚障害者に許可される電話での投票もあり、投票できないという言い訳が通用しない環境になっています。

また、選挙をイベントとして楽しむ国民性も高い投票率の秘訣だとも言われています。

投票所ではソーセージをグリルする屋台が現れます。「デモクラシー・ソーセージ」と呼ばれており、それを目当てに投票所を選ぶという人も多くいるようです。

そのような事もあり、オーストラリアの投票率も約90%を保っています。



メリット・デメリットは?

日本では投票を「義務」ではなく「権利」と捉える任意投票制が採用されており、投票しないことも自由とされています。

では、投票が義務化となった場合のメリットとデメリットはどのようなものが考えられるのでしょうか。

メリット

まずはメリットを見ていきます。

投票率アップ

ベルギー、オーストラリアの例を見て分かるように、一番のメリットはやはり投票率が上がることでしょう。
高い投票率ということは多くの国民が政治参加をするということでもあるため、民主主義の原則を実現できると考えることができます。

政治への関心アップ

選挙に興味が無かった人達が投票を行うようになることで、政治活動への関心や参加意欲が高まると考えられます。

公平な政治の実現

若者の投票率も低く「シルバー民主主義」であることから、若者の声が政治に反映されにくい現状ですが、国民全員が投票を行うことでより公平な政治を実現することができると考えられています。

デメリット

投票しない権利の侵害

投票を権利として考えると、投票を義務化することは投票しない権利を侵害することになります。
政治的なイベントに参加すべきでないと考える宗教も存在するため、その信者たちの宗教的実践の自由を否定することにもなってしまいます。

適当な投票の増加

政治に関心が無い人が投票を強制された場合、候補者や政策について知識を持たないまま知名度のある候補者に投票したり、あるいは白紙投票をしたりするなど適当に投票をする人が増えることで不適切な政策が実行されてしまう可能性があります。

政治不信を助長

政治に関心や知識を持たない人や意思を持って投票しない人が強制的に投票をさせられることで政治への不信感を募らせることが考えられます。



選挙投票義務化 世間の反応

賛否両論ある投票義務化について世間はどのように捉えているのでしょうか。

https://twitter.com/SECILNRUN/status/1287743337814822912?s=20

投票を義務化する前に国民が政治への関心を持てる政治にするべき、義務化するのであればネット投票を導入してほしいという意見が多く見られますね。



選挙投票義務化 まとめ

義務投票制度を取り入れたことで飛躍的に投票率が上がった国もあれば、デンマークのように任意投票制を取りながらも80%近くの投票率を保っている国もあります。

デンマークでは子どものころから、家庭や学校で社会・政治問題について自分の意見を表明することが習慣づいており、政治が人々の暮らしに身近なものであることが高い投票率を保っている要因であるとされます。

日本の低い投票率は問題視されるべきものですが、まずはなぜ人々が投票をしないのか、政治に関心を持たないのか、その根本的な原因を深く追及する必要があるのではないでしょうか。

多くの人が関心を持てる政治が行われ、強制されずに投票に行くことのできる国であってほしいですね。



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