高校普通科の再編【学際融合】と【地域探求】は何を教える?大学受験科目はどうなる?世間の反応も紹介

日常

2020年は教育改革の年ともいわれ、2020年度からは新学習指導要領が小学校で全面実施となり、大学入試センター試験は廃止され、大学入学共通テストが導入されます。

文部科学省は高校普通科の再編を行い、早ければ高校での新学習指導要領による学習が実施される2022年度にも新たに「学際融合学科(仮称)」と「地域探究学科(同)」を新設する方針を固めました。

1948年にできた普通科を再編して新しい学科を新設するのは初めての試みともあり、大きな注目を集めています。

戦後から続くつめこみ教育から急激な社会の変化に柔軟に対応できる人材育成を目指す教育へと大きく変わろうとしている日本の教育ですが、新たに新設される「学際融合学科(仮称)」と「地域探究学科(同)」では一体どんなことを学習できるのでしょうか。



【学際融合】と【地域探求】は何を教える?

約7割の学生が在籍する従来の普通科は大学入試のための画一的な教育となっており、特徴がなく、大学進学を目指さない生徒には学ぶ意欲をかきたてる内容ではないと指摘されています。

普通科であっても美術コースや理数コース、国際コミュニケーションコースなどを設けている高校もありますが、「学際融合学科(仮称)」と「地域探究学科(同)」ではどのようなことを学習するのか紹介したいと思います。

普通科再編の背景は?

AI技術の進展、グローバル化、不透明な国際情勢など、社会の在り方は急激に変化しています。

そして今現在も進行している新型ウィルス感染症の拡大によって、これからもその加速度は増すとされています。
そのような先の見えないこれからの社会で生きる力を身に付けるためにも教育改革が急がれています。

学習指導要領は10年に一度改訂され、前回の改訂時では「生きる力」をはぐくむ教育を目指していました。

今回の新学習指導要領では「生きる力」を持ち、激しく変化する社会を柔軟に逞しく生き抜く力をはぐぐむことを目指しています。

学際融合学科(仮称)

大学や国際機関と交流を持ち、2015年に国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の実現や、世界で起きている現代的な問題に取り組むとされています。

SDGsとは2030年までに先進国や途上国、個人、企業などあらゆる垣根を超えて協力し、より良い未来をつくることを国連で決めた17個のゴール・169のターゲットから構成された国際目標です。

広島県にある武田高等学校ではSDGsに積極的に取り組んでおり、アジアの国々と日本との比較によって現代社会の問題を分析し、自分たちなりの解決策を考え、プレゼンを行うなどしているそうです。

地域探究学科(仮称)

少子高齢化など地域社会が抱える課題に取り組み、自治体や地元企業とも協力し、高校と地域をつなぐコーディネーターが配置されるようです。

地域ごとに特色を打ち出し、離島や中山間地域の中学生が高校を幅広く選択できるようにし、農村地域ではJAや農家などとの交流を深め、人材流出防止や定着を目指す狙いがあります。

愛知県にある私立愛知黎明高等学校の普通科・地域探求コースでは地域のコミュニティづくりにリーダーシップを発揮する人材の育成を目指し、ゼミ形式の授業も取り入れられています。

地元商工会と連携をしてインターシップやフィールドワークを行い、外とのつながりを持ちながら探求学習を進めているようです。

普通科再編の課題は?

「学際融合学科(仮称)」と「地域探究学科(同)」、どちらも文系・理系に偏らないバランスのとれた科目であることを目指しています。

自治体や地元企業、国際機関との連携を取るとしていますが、はたして公務員である普通の公立高教員にそこまでのコネや余力があるのか、すでに特色のある普通科にとっては負担となって現場が疲弊してしまわないか、など気になるところではありますが、県や市が率先してリードをとる必要がありそうですね。



大学受験科目はどうなる?

「学際融合学科(仮称)」や「地域探究学科(同)」に進学した場合、通常の普通科とは受験科目が異なるのか気になりますよね。

残念ながらまだ詳細は明らかにはされていませんが、2024年度には新学習指導要領を基盤とした入試が始まる予定なので、2022年度に新学科が設置された場合、「学際融合学科(仮称)」や「地域探究学科(同)」に在籍する生徒用の入試が用意される可能性もあります。

2020年教育改革では「思考力・判断力・表現力」が求められ、主体性を持って学ぶアクティブラーニングが取り入れられています。

大学入学共通テストには記述式問題を導入予定でしたが、土壇場で延期が発表されました。

2020年度からの大学入試では「主体性」が評価され、高校からの調査書をこれまで以上に重視するという方針が発表されていますが、留学、海外経験、資格などを持つ比較的裕福な家庭の生徒が評価されやすく、大学入試に求められる公平・公正を欠くという危険性があり、これからも議論が重ねられていく予定です。

どんな受験科目が必要であろうとも、通常の普通科に在籍する生徒と、新設される学科に在籍する生徒が平等に大学進学できるカリキュラムや入試制度が構築されるといいですね。



世間の反応は?

大胆な教育改革は世間ではどのように受け止められているのでしょうか。

面白そうという声もありますが、現場の負担や実施までの時間が無いことを指摘する声もありますね。



まとめ

土壇場で頓挫してしまったばかりの大学入試改革ですが、普通科再編はスムーズに進むのか心配ですね。

普通科に特色がなく、これからの社会に適応できる力をはぐぐむ必要があることは理解できますが、国際教養に特化したコース、地域に密接したコースをすでに設けている普通科についてはどうするのか、大学受験の時に不利にならないのか、現場の教員の負担をどう解消するのか、教員の確保をどうするのか、何も知らされないまま2022年度の新設を目指すことはあまりに早急であるように感じますね。

中学生のときに決めた進学先で将来、不利を被らないことを願わずにはいられませんね。



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