スーパーシティ法案の内容はどのようなもの?候補地自治体の一覧や世間の反応を調査してみた

日常

世論の声を受けて種苗法改正案、検察庁法改正案が見送りとなったのに対し、スーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)についてはほとんど報道されないまま27日に参院本会議で可決、成立しました。

新型ウィルス感染症拡大の影響を受け、遠隔診察やオンライン学習の必要性が高まっていることから早急に成立させたようです。

しかし個人情報の管理や住民の合意など、人権に関わる法案でありながらも議論が十分に精査されないまま可決されたという批判の声も上がっています。

そこで今回はスーパーシティ法案について調べてみました。



スーパーシティ法案の内容は?

スーパーシティ法案とはネット企業と自治体がタッグを組み、人工知能(AI)とビッグデータを駆使してまちづくりを目指す「スーパーシティ」構想の実現に向けた法案です。

現行法では事業計画案の検討中に各省と調整を行う必要があり、各省からの修正事項が出されることで計画案がバラバラとなってしまい、「スーパーシティ」を実現させることが難しいとされています。

しかしスーパーシティ法案が成立したことで、規制改革をまとめて行うことができるようになるため、暮らしのさまざまな場面がデジタル化されるようになります。

AIやビッグデータを活用したまちづくりは国際的に急速に発展していますが、日本政府は生活全般に最先端の技術を実装することで世界初の「まるごと未来都市」の実現を目指しています。

「スーパーシティ」の構想の具体像としては、キャッシュレス決済・オンライン診療・オンライン行政手続き・オンライン教育・自動車自動運転・ドローン配送・スマートシステムを活用したインフラ管理・遠隔監視などがあり、これらのサービスを利用することで生活の利便性を高める狙いです。

子どもたちは海外の子どもたちとオンライン交流をすることで生きた外国語を身に付け、自分専用に教育内容をカスタマイズして、定刻で走行する自動運転のバスで登下校をし、空には宅配ドローンが行き交う、という光景が当たり前になる日も近いかもしれませんね。

政府は全国5か所程度の地域を特区に制定する方針で、秋までに募集を開始し、年内には決定する予定です。2022年以降には計画が実現できる見込みです。

「スーパーシティ」候補地は?

政府は「スーパーシティ」構想のアイデア公募をし、54の団体が応募しており、この中から候補地が選べられると思われます。

応募されたアイデアをみてみましょう。

地方都市

地方都市では自動車運転免許を返納した高齢者が急増し、タクシーが減少しているため料金も高く設定されています。そのため、通院を断念する高齢者が増加する見込みです。
このことを受け、配車アプリでボランティアドライバーが運転する自家用車タクシーでの通院を可能にし、運賃はボランティアポイントで支払います。
配車データ、ボランティアポイント、健康状態のデータ、住所等は連携されて管理されます。
どんなボランティアをするのか、ボランティアの場所までどうやって行くのか、など気になるところではありますが、ボランティアポイントで支払うとはユニークなアイデアですね。

 

観光都市

観光都市として有名であるにも関わらず、実際は製造業の方が暮らしに余裕があり、観光地間の協力体制が構築できていない場合があります。
そのため、観光地を効率的に回遊する自動走行車両を導入し、さらに顔認証やワンスオンリー技術を活用して域内完全キャッシュレスにし、手ぶらで観光ができるようにします。
また滞在中はヘルスケアウェアラブル端末により、健康管理をしたり、キャッシュレスでの買い物を自宅配送やクーポンによってサポートします。
住民データに加え、顔や趣味・嗜好や健康状態のデータが連携されます。

健康改善都市

脳卒中死亡率の高い市では医療費が市の財政を圧迫している場合があります。そのため、健康診断結果、カルテや処方箋のデータを連携させて、パーソナライズされた運動メニューを推奨したり、発病リスクのアラートを配信します。
ウェアラブルデバイスで健康管理をし、発病した場合は自覚症状が出る前にAI受診推奨が行われます。
健康診断を受診したり、自覚症状が出なくても発病が分かるとは、現在猛威を振るっている新型ウィルスの拡大防止に効果的かもしれませんね。

「スーパーシティ」の課題

AIやビッグデータを利用した社会はそれは便利なものでしょう。

しかしそれは同時に、国や市が持っている個人情報や民間企業が持つ個人の行動履歴のデータが一元化されることで、超監視社会が成立してしまう恐れがあるのではないでしょうか。
いつ、どこで、誰が何を買った、個人の行動傾向、そんな情報まで共有化されてしまいます。

アメリカサンフランシスコの場合

米国のサンフランシスコ市では、市民のプライバシーや自由を不当に侵害しているとして、行政が町に監視カメラなどの顔認証技術を導入することを禁止しています。

カナダ トロントの場合

カナダのトロントではGoogle系列会社が行政と連携して、ウォーターフロント地区に人やモノをセンサーで把握するハイテク都市の構築を目指していましたが、データ収集や大衆監視につながる可能性を懸念する声が上がり、「カナダはグーグルの実験用マウスではない」としてプライバシー保護団体や地元の活動団体は計画に反対していました。
また、複数のアドバイザーがプライバシー問題を理由に辞任しています。
今月に入り、財政的に実現不可能としてこの事業は中止となりました。

日本でも公的機関の個人情報の流出

2015年に日本年金機構が約125万件の個人情報を外部に流出したことは衝撃的でしたが、スーパーシティで取り扱う個人情報が漏れてしまえば、個人の健康状態や住所、顔、趣味・嗜好、マイナンバー等の全ての個人情報が漏れてしまうことになるので、より一層のセキュリティ対策が必要です。

このように国民のプライバシーや権利を侵害せずに、かつ守りながらスーパーシティの実現ができるのかどうか、非常に難しい問題ではないでしょうか。

個人情報の収集・利用に当たっての本人同意や、自治体が対象地域を決める際の住民合意をどう得るかなどについて、政府は「個別ケースの判断」としており具体的には定まっていません。

スーパーシティ法案 世間の反応は?

審議中にマスコミに大々的に取り扱われることなく可決、成立した「スーパーシティ法案」ですが、世間はどう捉えているのでしょうか。

https://twitter.com/mikimiki1975525/status/1265559780921348097?s=20

「#スーパーシティ法案に抗議します」というタグつきツイートが多く見られ、多くの人が法案がメディアにほとんど報道されないまま可決されたことに違和感や怒りを覚えているようですね。

スーパーシティ法案 まとめ

国民の意見が置いて行かれたまま可決、成立してしまったように思える「スーパーシティ」法案ですが、デジタル化された社会であれば利便性が高くなり地域活性化にも繋がるかもしれません。

しかし、高齢者の多い地域をスーパーシティに制定したいとしながらも、内閣府が作成した「スーパーシティ」の構想についての資料には「ヘルスケアウェアラブル」、「ワンスオンリー」などカタカナが多用されており、高齢者に分かりやすい説明とは言えないものとなっています。

高齢者の方が自分でスマホを使って配車アプリを使うかどうかは疑問であり、高齢者の方々に必要なまちづくりなのかどうかは不透明です。

「スーパーシティ」をどのように選定するのか、どうやって市民の同意を得るのか、どうやって個人情報を管理するのか、今後の動向に目を光らせて国民が政府を監視する必要がありそうですね。



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